借金を繰り返すのは、性格?それとも?
借金を繰り返して、全く懲りない人を見ると、しばしば「借金癖がついている」などと言ったり、
「性格に問題があるから、自己規制が効かないのだろう。」「持って生まれた人格なんじゃないか?」などの感想を持ったりします。
確かに、常識的に考えれば「借金があることは辛くて、精神的にストレスを与えるもの」「早く返済したい、と考える」という印象があります。
そんな、辛くて嫌なものであるはずの借金を、わざわざ自分から増やすような行動は、全く理解不能な行動ということになるのでしょう。
こういった行動は、しばしば、家族にも理解ができず、配偶者や親、兄妹などの親族からも呆れられ、時には、深刻な争いや関係の悪化を招く原因につながります。
では、ご本人はどう思っているのか?というと、質問してみても、はっきりとした返事が返ってこないことが少なくありません。
「そんなつもりはなかった。」とか「別に…」など、全く理屈の通らない返事が返ってくるために、これまた「反省がない」と一層、関係者の怒りを買うことになります。
多くの場合、「本人は、自分のだらしなさを自覚しているくせに、開き直って、悪かったという態度さえ示さない。」と解釈されているようです。
しかし、この解釈は適切ではない、という意見が近年目立ってきました。
借り続ける癖は、こんな理由があった!?
借り続ける癖があるように思える人は、経済破綻などの生活への影響ばかりが問題視されてきて、借りている本人の内面にはあまりメスが入ることはありませんでした。
これは、借金というものが法律行為としてとらえられ、精神面や心理面の問題点として取り上げられることが少なかったことも大きな原因でしょう。
しかし、バブル経済崩壊以降、クレジットカード破産など、これまで見かける事のないような破綻を起こす人が増えてきました。
その後も研究が続けられて、現在では、
「病的な借金癖と、通常の借金では、心理的な状況には、はっきりとした違いがある」ということが知られています。
借り続ける人が、借金を繰り返すことの理由を質問されると、その場だけを切り抜けるかのような言い訳で汲々とすることの背景には、
実は、ご本人にもコントロール不能な病が隠されている可能性が示唆されるようになってきました。
その病とは、「依存症」です。
物質だけではない、行動に依存する依存症の心理
依存症は心理面での特徴的な症状が良く知られていますが、一方で、脳の気質が大きく変化していくことも知られています。
日本で「依存症」ときくと、薬物依存やアルコール、タバコ、カフェインなどの嗜好品に耽溺(たんでき)するものをイメージされがちです。
しかし、実は、依存症というのは、「脳が快楽を感じる脳内伝達物質を、常時過剰に必要とする状態が固定化して、かつ、そのためにあらゆる努力を払う状況」が作られれば依存症と判断されます。
このような状況が完成されてしまえば、依存症であるわけでその原因が、物質であるか、行為であるか?は問われません。
ただし、物質依存と比べて、行為に依存する依存症(専門家は、「嗜癖(しへき)」と呼びます)は、しばしば、自分の置かれている状況を被害的にとらえたり、
周囲の人間を振り回すことにも精神的満足感や安堵感を得ているという特徴も併せて示すことがあります。
そのため、依存症はしばしば、家族関係において、奇妙な特長を示し、更にそれが世代を通じて継続されるということも知られています。
昨今、新聞紙上で、発達障害の特徴を示す人と、依存症に因果関係があるのではないか?といったことも取りざたされているようです。
借金の依存症の場合、「借金をする」という行為に依存が形成されていて、返済であるとか、何の目的で借りているのか?
ということはあまり関係ありません。ギャンブル依存症が、借金依存症と混在しているような場合もあるようです。
依存症者が大した理由もないはずなのに、対象の行為を繰り返してしまうのは、万引きを行うひとが裕福な家庭の人物であったりするのと同じです。
貧乏であったり、モノが欲しいわけではなく、万引きの背徳感やスリルに脳が耽溺しているのです。
同じように、借金依存の場合、借金をする事そのものが目的であり、返済するべき対象がナクナッテしまうと、心の張合いも失われる、ということを、恐れている多重債務者は多いことでしょう。
あまりに深刻な場合は、医師にも相談を
借金そのものは、弁護士や司法書士といった、法律関連の方法で整理ができますし、借り換えが可能であれば一本化することで月々の返済そのものは軽減できます。
しかし、病的に借金を繰り返す人の場合、せっかく借金を整理しても、また、借金のための借金を繰り返す行動を自分で辞めることが出居ないというケースが珍しくありません。
このような症状を示していると、家族は経済的に追い詰められますし、せっかく整理して減らしたはずの借金が、知らない間にこっそり増やされていたり、
何度、努力しても本人が完済に協力しないどころか、足を引っ張るとして、落胆してしまい、離婚など一家離散の原因となることも珍しくありません。
もしも、ギャンブル依存や借金依存の可能性を感じるのであれば、早期に心理士や精神科医に相談することが必要となってきます。
心理面からのアプローチをしないまま、法律面からのアプローチだけを行うことは、かえって状況を悪化させるリスクが残ります。
こういった状況の場合、家族も依存症の関係に巻き込まれていて、共依存の関係になってしまう危険性もあります。
依存症が疑われる場合、早めにカウンセリングを始めることが、問題を軽くするのに役立つことは間違いありません。